"「古い出版社は出版とは何かが分かってないよ」
出版や編集のイロハを知らなかったというDaveさんですが、一方、従来の出版社については手厳しい意見をお持ちです。「古い出版社は出版とは何かが分かってないよ」といいます。
1冊の本が5年も10年も継続して売れる時代には、じっくり時間をかけて本を作っていました。そうしてできた書籍一覧リストこそが価値だと、従来の出版社は考えていた、と。でも、「もう書籍だけが選択肢じゃなくなったんだ」とDaveさんは言います。紙の本と原価構造やビジネスモデルが異なるので、ページ数(ボリューム)についての制約がありません。上記のCoffeeScript本ようにタイム・トゥー・マーケットをぐんと縮めることで需要を掴んでいる、というわけです。Pragmatic Bookshelfは、未完の状態であっても書籍を“ベータ版”として読者に届けることを始めた出版社の1つです。
Daveさんは、「読者を犯罪者扱いしてはいけない」とDRMについても批判的です。Pragmatic Bookshelfは、“ソーシャルDRM”と呼ばれるアプローチを、最も早く取り入れた出版社の1つです。PDFやepubには購入者の名前が刻まれます。これが必要十分な抑止力となってカジュアルコピーを防ぎます。Pragmatic Bookshelfの読者はエンジニアたちなので、ものの数分もあればPDFファイルから名前を消し去ることもできるでしょう。この意味ではPragmatic Bookshelfの本は、完全にDRMフリーです(名前が刻まれる以外、物理的なコピーに制限はありません)。でも、今のところ、Pragmatic Bookshelfはこれで上手く儲けが出ているようです。うまく行っている理由が、個々の読者の良心によるものなのか、周囲の目によるものなのか、商品がニッチ市場対象だからなのか分かりません。
どのぐらい儲かっているのか?
これまで200タイトル以上の書籍をリリースして、すべての本が黒字。売れない本で3000から4000部、最も売れる本で十数万部といい、Daveさんは「本業より多く稼いでいる著者もたくさんいる」と言っています。日本の技術系出版だと、最近は初版で3000部も刷れれば御の字(売れれば、ではなくて、刷れればです)。1万部も売れたらベストセラーかと思いますが、まさにケタ違い。日本語圏と英語圏ではやはり対象読者数が1桁違うのだなと思います。ちなみに、Pragmatic Bookshelfでは章立ての構成や校正作業を行う編集業務は外部のプロに委託しているそうです。
Pragmatic Bookshelfの本は紙版で30~40ドル、その電子版は3割引きの20~30ドルというところです。紙の本はこれまで100冊ぐらいしか売れてないそうなので、売上のほぼすべてが電子版ということでしょう。1冊当たり2万部ほど売れると仮定すると、Pragmatic Bookshelf全体でこれまでに累計400万部の販売実績。1冊25ドルとすると、1億ドル(80億円)の売り上げということになります。逆に1冊25ドルで2万部売れれば、1ドル80円として売り上げは4000万円。教えてもらっていませんが、著者の取り分は少なく見積もっても5割ぐらいでしょうか(ちなみに従来の出版社だと著者の取り分は7~15%程度)。とすると、2000万円。これなら昼間の仕事をやめて、本気で本を書こうという人も現れそうですよね。
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